幾何公差の基礎知識
文章推薦指數: 80 %
第2回:位置に対する寸法公差と幾何公差の違い; 第3回:幾何特性の種類と記号 ... 平行度は、サイズ公差と平面度公差・真直度公差のいずれか大きい方の値をとる.
ALL
基礎知識
インタビュー
コラム
イベント
ニュースまとめ
市場レポート
幾何公差の基礎知識
Tweet
著者:株式会社ラブノーツ 代表取締役技術士(機械部門) 山田学
もくじ第1回:幾何公差とは?第2回:位置に対する寸法公差と幾何公差の違い第3回:幾何特性の種類と記号第4回:データム記号と幾何公差の表記法第5回:形状偏差の指示例と公差域の定義第6回:姿勢偏差の指示例と公差域の定義第7回:位置偏差の指示例と公差域の定義第8回:振れ偏差の指示例と公差域の定義
第1回:幾何公差とは?
近年、製造業のグローバル化が進み、海外でのモノづくりが当たり前になってきました。
同時に、設計者には、高い品質と精度、さらには開発期間や製造時間の短縮が求められています。
このような中、幾何公差図面が注目されています。
本連載では全8回にわたり、幾何公差の必要性と正しい使い方を解説します。
第1回となる今回は、幾何公差の概念に加えて、独立の原則と包絡の条件からサイズ公差(従来の寸法公差)と幾何公差の違いを学びましょう。
1.幾何公差とは
幾何公差とは、設計意図を正しく伝えるために、図面に記載する形状・姿勢・位置などの幾何特性の誤差の許容値です。
サイズ公差とよく対比されます。
幾何公差の基本概念は、JISB0021:1998製品の幾何特性仕様(GPS)によると、以下の通りです。
4.基本概念
4-1.形体に指示した幾何公差は、その中に形体が含まれる公差域を定義する。
4-2.形体とは、表面、穴、溝、ねじ山、面取り部分又は輪郭のような加工物の特定の特性の部分であり、これらの形体は、現実に存在しているもの(例えば、円筒の外側表面)又は派生したもの(例えば、軸線又は中心平面)である。
4-3.公差が指示された公差特性と寸法の指示方法によって、公差域は次の一つになる。
・円の内部の領域
・二つの同心の円の間の領域
・二つの等間隔の線又は平行二直線の間の領域
・円筒内部の領域
・同軸の二つの円筒の間の領域
・二つの等間隔の表面又は平行二平面の間の領域
・球の内部の領域
4-4.更に限定した公差が要求される場合、例えば注記を除いて、公差付き形体はこの公差領域内で任意の形状又は姿勢でもよい。
4-5.特に指示した場合を除いて、公差は対象とする形体の全域に適用する。
4-6.データムに関連した形体に指示した幾何公差は、データム形体自身の形状偏差を規制しない。
データム形体に対して、形状公差を指示してもよい。
2.幾何公差の必要性
サイズ公差があるのに、なぜ幾何公差が必要なのでしょうか? また、幾何公差という言葉に、尻込みしてしまうエンジニアも多いことでしょう。
「幾何公差を使わなくても問題が発生していない」、「コストアップになる幾何公差なんか使いたくない」という本音が聞こえてきそうです。
従来、日本では図面を描く際、サイズ公差が用いられてきました。
サイズ公差とは、図面が指示する部品や製品の長さや幅、直径などの大きさ(図示サイズ)に対し、許容される誤差を意味します。
言い換えれば、あるべき2点間の距離のばらつきです。
ところが、部品の形体を表す特性は、大きさだけではありません。
形状・姿勢・位置も、形体を表す特性です。
これらは、大きさとは別に分類され、幾何特性(Geometry、ジオメトリー)と呼ばれます(図1)。
図1:大きさのばらつきと形のばらつき
幾何特性の誤差は、反りや角度ずれ、位置ずれなどによって生じます。
また、幾何公差を使って図面を描くことを、……
>>第1回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.独立の原則と包絡の条件
サイズ公差と幾何公差を明確に区別するために、独立の原則と包絡(ほうらく)の条件を解説します。
・独立の原則
JIS(日本工業規格)では、サイズと幾何特性の関係について、独立の原則を採用しています。
JISB0024製図−公差表示方式の基本原則によると、独立の原則は「図面に指示された各要求事項、例えばサイズ公差や幾何公差は、特別な相互関係が指定されない限り、他のいかなる寸法や公差または特性とも関連しないで、独立して適用される」というものです。
サイズとは長さ・幅・直径など実際の大きさを指し、サイズ公差で、2点間距離のあるべき大きさからのばらつきを指示します。
幾何特性とは反り・角度ずれ・位置ずれなどを指し、幾何公差で、あるべき形状からの変化の度合いを指示します。
独立の原則の下では、サイズのばらつきとは別にあるべき形状からのばらつき(変形)が加算されるため、上の許容サイズ(公差の中での最大外径)である⌀30.0を超える実効領域(物理的占有領域)を必要とします(図2)。
図2:独立の原則における図面(左)と、部品のばらつき(右)
・包絡の条件
独立の原則とは逆に、包絡の条件では、サイズと幾何特性に相関関係を持たせます。
ASME(アメリカ機械学会、AmericanSocietyofMechanicalEngineers)が標準的に適用する考え方です。
JISB0024製図−公差表示方式の基本原則によると、包絡の条件は、……
>>第1回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
第2回:位置に対する寸法公差と幾何公差の違い
前回は、幾何公差の概念を説明しました。
今回は、幾何公差を使って位置精度を指示する方法とメリットを解説します。
2016年、JIS(日本工業規格)の製図に関する規格、JISB0420-1製品の幾何特性仕様(GPS)が公開されました。
この規格では、従来の寸法公差に替わって、幾何公差を使って位置精度を指示すべきであると定め、幾何公差は大きな注目を集めました。
位置に対するサイズ公差と幾何公差の違いを理解し、幾何公差で指示することの優位性を学びましょう。
1.寸法の定義
2016年のJISB0420-1製品の幾何特性仕様(GPS)では、従来用いられていた寸法を、長さと角度に分類しました。
また、長さを、位置とサイズに分類し、それぞれ幾何公差とサイズ公差と定義しました(図1)。
図1:寸法の分類と定義
従来、日本では、図面で穴などの位置精度を指示する場合、従来の寸法公差(基準寸法に対するプラスマイナス表記など)を使うことが一般的でした。
しかし、海外では幾何公差を使うため、……
>>第2回 第1章の続きを読む(PDFダウンロード)
2.穴位置に対する従来の寸法公差の考え方
穴位置のばらつきを、従来の寸法公差と幾何公差で指示した場合を比較してみましょう。
図2の上は、面Aと面Bを基準にした2つの穴の位置を、従来の寸法公差を用いて表した図です。
このとき、設計者は、2つの穴の中心点の位置ばらつきを、図2の下のように、それぞれの基準面から一辺0.2mmの四角い領域と考えています。
図2:従来の寸法公差による指示と公差領域のイメージ
多くの日本の設計者は、図2の下の図をイメージして製図を行っていると思われます。
しかし、図面に特に指示がない場合、サイズは2点間の直線距離で測定することが世界的なルールです。
そのため、従来の寸法公差を使って穴の位置を指示する場合、基準面から対象となる穴の中心線までの2点間の距離を測定します。
しかし、……
>>第2回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.穴位置に対する幾何公差の考え方
従来の寸法公差を用いた図面を、幾何公差による位置度を使って表すと、図4の上のようになります。
この場合、2つの穴の中心点のばらつきは、それぞれの基準面に対して、直径が0.2mmの円の領域となります(図4の下)。
図4:幾何公差による指示と公差領域のイメージ
幾何公差の特徴として、部品を組み付ける際に、基準面に当て付ける順序を図面に指示することができます。
公差記入枠の左から数えて3つ目以降の枠内にデータム(幾何公差を求めるための幾何学的基準)を記入します。
このとき、左にあるほど優先度が高く、その順番に部品を組み付けていくことを意味します(図5)。
図5:データムの優先順位
穴位置を測定するには、まず、図面で指示した第1優先データム面にゲージを押し当てます。
次に、そのゲージに直角に立てたゲージを第2優先データム面に押し当てます。
これにより、座標が決まります。
この場合、データムA面にゲージなどの冶具を当て、……
>>第2回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
第3回:幾何特性の種類と記号
前回は、幾何公差を用いた位置精度の指示方法について説明しました。
今回は、幾何特性の種類と特徴、および各特性を使用する目的を解説します。
また、サイズ公差では普通許容差(一般公差、普通公差)と呼ばれるものが、幾何公差はどのように適用されるかを紹介します。
1.幾何特性の種類と記号
図面上で、ある部品が直線・円・平面で示されている場合、多くの日本人加工者はできるだけ正しい直線・円・平面に加工しようとします。
ところが、完全に正しい形状(幾何学的に正しい直線・円・平面)に仕上げることは不可能です。
そこで問題となるのは、どの程度まで正しく仕上げたらよいか、逆にいえば、どの程度までの狂いであれば許されるかです。
それを数値化したものが、幾何公差です。
幾何公差には、14種類の特性があります。
幾何公差を学ぶ最初のステップとして、14種類の幾何特性の名称と、各特性を使用する目的を覚えましょう(表1)。
表1:幾何特性の名称と使用目的
名称
使用する目的
真直度
理論的に正確な真っ直ぐな線から、どれだけ変形しているかを表す
平面度
理論的に正確な真っ平らな面から、どれだけ変形しているかを表す
真円度
理論的に正確な真円から、どれだけ変形しているかを表す
円筒度
理論的に正確な円筒から、どれだけ変形しているかを表す
線の輪郭度
理論的に正しい母線形状から、どれだけ変形しているかを表す
面の輪郭度
理論的に正しい表面形状から、どれだけ変形しているかを表す
平行度
基準に対して、どれだけ平行から、傾いているかを表す
直角度
基準に対して、どれだけ直角から、傾いているかを表す
傾斜度
基準に対して、理論的に正確な角度から、どれだけ傾いているかを表す
同軸度
(同心度)
基準となる中心線に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す
(基準となる中心点に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す)
対称度
基準となる中心平面に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す
位置度
基準からあるべき位置に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す
円周振れ
基準を回転させたとき、任意の位置での母線がどれだけ振れているかを表す
全振れ
基準を回転させたとき、表面全体がどれだけ振れているかを表す
これらの14種類の幾何特性は、形状偏差、姿勢偏差、位置偏差、振れ偏差の4つの偏差(ずれ)に分類されます。
形状偏差とは、対象となる形体が、幾何学的に正しい形状を表す偏差の許容値内にあるかを規定します。
姿勢偏差とは、対象となる形体が、データム(理論的に正確な幾何学的基準)に関連し、平行や直角、任意の角度で設計された形状が、幾何学的に正しい姿勢を表す偏差の許容値内にあるかを規定します。
位置偏差とは、……
>>第3回 第1章の続きを読む(PDFダウンロード)
2.普通幾何公差とは
普通幾何公差は、JISB0419普通公差-第2部:個々に公差の指示がない形体に対する幾何公差において規定され、主に機械加工の対象となる形体に適用されます。
ただし、14種類全ての幾何特性に普通幾何公差が存在するわけではなく、普通幾何公差が適用される幾何特性は7種類です(表3)。
表3:普通幾何公差の適用
普通幾何公差が適用される幾何特性
真直度、平面度、直角度、対称度、円周振れ
真円度は、直径のサイズ公差に等しくとるが、円周振れの公差を超えてはならない(表7)
平行度は、サイズ公差と平面度公差・真直度公差のいずれか大きい方の値をとる
普通幾何公差が適用されない幾何特性
円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度、傾斜度、同軸度、位置度、全振れ
普通幾何公差の公差等級には、H、K、Lの3種類があります。
寸法公差(サイズ交差)における普通許容差と同様に、等級を選定する場合は、個々の工場で通常に得られる加工精度を考慮する必要があります(表4~7)。
表4:真直度および平面度の普通公差(単位mm)
公差等級
呼び長さの区分
10以下
10より上30以下
30より上100以下
100より上300以下
300より上1,000以下
1,000より上3,000以下
真直度公差および平面度公差
H
0.02
0.05
0.1
0.2
0.3
0.4
K
0.05
0.1
0.2
0.4
0.6
0.8
L
0.1
0.2
0.4
0.8
1.2
1.6
表5:直角度の普通公差(単位mm)
公差等級
短い方の辺の呼び長さの区分
100以下
100より上300以下
300より上1,000以下
1,000より上3,000以下
直角度公差
H
0.2
0.3
0.4
0.5
K
0.4
0.6
0.8
1
L
0.6
1
1.5
2
表6:対称度の普通公差(単位mm)
公差等級
呼びの長さの区分
100以下
100より上300以下
300より上1,000以下
1,000より上3,000以下
対称度公差
H
0.5
K
0.6
0.8
1
L
0.6
1
1.5
2
表7:円周振れの普通公差(単位mm)
公差等級
円周振れ
H
0.1
K
0.2
L
0.3
普通幾何公差が適用されない特性については、どのように判断すればよいでしょうか?正論をいうと、……
>>第3回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
第4回:データム記号と幾何公差の表記法
前回は、幾何特性の種類と特徴、普通幾何公差について説明しました。
今回は、設計意図を表すためのデータム記号と、幾何公差記入枠の表記法を解説します。
多くの設計者が知らないルールで、指示する場所を誤ると、設計意図が正しく図面に反映されません。
測定の際にも誤った測定法になる可能性が高くなり、品質保証の仕組みが崩れてしまいます。
1.表面形体とサイズ形体から導かれる誘導形体
幾何公差の基本記号を指示する場所には、表面形体とサイズ形体から導かれる誘導形体の2種類があります(図1)。
表面形体は、物体の表面、または母線(表面上の任意の位置にある実体のある線)です。
一方、サイズ形体から導かれる誘導形体は、物体の中心線、中心平面、および中心点です。
図1:幾何公差の基本記号を指示する場所
2.データム指示のルールと注意点
データムは、関連形体(平行や直角のように、対象物の線や面との関係を指定する形体)の幾何公差を指示するときに基準となる線や面です。
JISB0022幾何公差のためのデータムでは、「関連形体に幾何公差を指示するときに、その公差域を規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準。
例えば、この基準が点、直線、軸直線、平面及び中心平面の場合には、それぞれデータム点、データム直線、データむ軸直線、データム平面及びデータム中心平面と呼ぶ」と規定されています。
データムは、作業担当者の視点によって、何を指示するために使うのか異なってきます。
設計者の視点:取り付け面や位置決め穴、回転軸を受ける穴、摺動面など
加工者の視点:加工の基準となる面や穴など
検査者の視点:定盤やゲージなどを当てる面や穴など
データムであることを示す場合、データム記号を用います。
データム記号は、三角記号とアルファベットの大文字を囲んだ枠で表します(図2)。
三角記号は、黒と白のどちらを使用しても違いはありません。
黒の方が目立つので、黒を使うとよいでしょう。
図2:データム記号
データム記号の記入場所は、投影図の外形線上や、寸法引き出し線上です。
向きに意味の違いはありません(図3)。
図3:データム記号の図示例
データム記号を図面に指示するとき、注意しなければいけないのは、記号を配置する場所です。
表面形体(表面、母線)と、サイズ形体から導かれる誘導形体(中心点、中心線、中心平面)に記号を配置するときの注意事項を確認しておきましょう。
・表面や母線にデータムを指示する場合
表面や母線にデータムを指示する場合、該当する形体の寸法線とは距離を置き、形状線上、または寸法補助線上にデータム記号を配置します(図4)。
図4:表面または母線をデータムにする場合
・中心点、中心線、中心平面にデータムを指示する場合
……
>>第4回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.幾何公差記入枠のルールと注意点
幾何特性の記号や幾何公差の値、その他の記号は、2つまたはそれ以上に分割した長方形の公差記入枠に記入します(図6)。
2つ以上のデータムを組み合わせて用いるデータム系の場合、データムの大文字を、公差記入枠の左から3番目以降の別々の区画に、優先する順番に並べます。
この場合の優先する順番とは、その部品の位置決めや測定をする際に、基準面となる順番を意味しています。
図6:公差記入枠の記入例1
公差記入枠は複数に分割され、データム記号・∅・特殊記号があるものやないものなど、さまざまな内容が入ります(図7)。
図7:公差記入枠の記入例2
なお、公差記入枠は、図面に水平に配置します。
指示線は公差記入枠の左右どちらから出ていても、違いはありません(図8)。
図8:公差記入枠の向きと指示線
公差記入枠を図面に記入するとき、注意するのは指示線の矢を当てる場所です。
注意するのは、表面形体(表面、母線)と、サイズ形体から導かれる誘導形体(中心点、中心線、中心平面)に公差記入枠を指示するときです。
ただし、データムの指示と全く同じなので、心配する必要はありません。
・表面や母線に幾何特性を指示する場合
表面や母線に幾何公差を指示する場合、該当する形体の寸法線とは距離を置き、形状線上、または寸法補助線上に指示線の矢を配置します(図9)。
図9:表面または母線に幾何公差を指示する場合
・中心点、中心線、中心平面に幾何特性を指示する場合
……
>>第4回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
第5回:形状偏差の指示例と公差域の定義
幾何偏差には、形状偏差、姿勢偏差、位置偏差、振れ偏差の4種類があります。
今回は、形状偏差の指示例と公差域を解説します。
公差域とは、図面が示す幾何学的に正確な位置に対するバラつきの許容範囲(領域)です。
公差域は、幾何特性の種類や、公差を適用する場所(指示線の矢を当てる位置)、寸法補助記号の有無によって異なります。
1.形状偏差の特徴
形状偏差は、対象となる形体が、幾何学的に正しい形状を表す偏差(ずれ)の許容値内にあるかを規定するものです。
形状偏差に分類される幾何特性には、真直度、平面度、真円度、円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度があります。
形状偏差はデータムを参照せず、その形体が指定したあるべき形状(カタチ)になっているかを要求する特性です。
形状を満足できればよいため、傾きや位置ずれは問われません。
形状偏差は幾何特性の基本となり、姿勢偏差や位置偏差にも関連します。
2.真直度の指示例と公差域
真直度は、その表面上の線や中心線が、理論的に正確な直線からどれだけ変形しているかを表す指標です。
・平面に真直度を指示する場合
図1は、平面の母線(表面上の任意の位置にある実体のある線)への真直度の指示例です。
この場合、平面上の母線は、矢を当てた投影面を挟む平行な2直線間に存在しなければなりません。
平行な2直線間の距離は公差記入枠で指定され、図1では0.1mmです。
また、公差域となる平行な2直線は、必ずしも対面と平行である必要はありません。
図1:平面の母線への真直度の指示例とその公差域
・円筒面に真直度を指示する場合
図2は、円筒面上の母線への真直度の指示例です。
この場合、円筒面上の母線は、矢を当てた投影面を挟む平行な2直線間に存在しなければなりません。
平行な2直線間の距離は公差記入枠で指定され、図2では0.15mmです。
また、公差領域となる平行な2直線は、必ずしも中心線と平行である必要はありません。
図2:円筒面上の母線への真直度の指示例とその公差域
・円筒の中心線に真直度を指示する場合
……
>>第5回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.平面度の指示例と公差域
平面度は、その表面全体が、理論的に正確な平面からどれだけ変形しているかを表す指標です。
図4は、形体の表面への平面度の指示例です。
この場合、形体の表面は、……
>>第5回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
4.真円度の指示例と公差域
真円度は、その表面上の任意の線が、理論的に正確な真円からどれだけ変形しているかを表す指標です。
真円度は、任意の軸直角断面における外周円が対象となるので、母線指示となります。
そのため、円筒軸やテーパー軸などに指示することができます。
・円筒軸に真円度を指示する場合
図5は、円筒軸への真円度の指示例です。
この場合、円筒面の任意の軸直角断面における外周の母線は、同一平面上の、離れた2つの同心円間に存在しなければなりません。
2つの同心円間の距離は公差記入枠で指定され、図5では0.1mmです。
図5:円筒軸への真円度の指示例とその公差域
・テーパー軸に真円度を指示する場合
……
>>第5回 第4章の続きを読む(PDFダウンロード)
5.円筒度の指示例と公差域
円筒度は、その表面全体が、理論的に正確な円筒からどれだけ変形しているかを表す指標です。
円筒度は、円筒表面全体が対象となるため、表面指示となります。
図7は、円筒度の指示例です。
この場合、円筒表面全体は、……
>>第5回 第5章の続きを読む(PDFダウンロード)
6.線の輪郭度の指示例と公差域
線の輪郭度は、その表面の任意の線が、理論的に正しい母線形状からどれだけ変形しているかを表す指標です。
線の輪郭度は、形体表面上の任意の母線が対象となるため、母線指示となります。
図8は、線の輪郭度の指示例です。
この場合、形体表面上の母線は、……
>>第5回 第6章の続きを読む(PDFダウンロード)
7.面の輪郭度の指示例と公差域
面の輪郭度は、その表面全体が、理論的に正しい表面形状からどれだけ変形しているかを表す指標です。
面の輪郭度は、形体表面全体が対象となるため、表面指示となります。
図9は、面の輪郭度の指示例です。
この場合、表面全体は、……
>>第5回 第7章の続きを読む(PDFダウンロード)
第6回:姿勢偏差の指示例と公差域の定義
今回は、姿勢偏差の指示例と公差域を解説します。
姿勢偏差は、対象となる形体がデータムに関連して、平行や直角、任意の角度を持つ幾何学的に正しい姿勢を表す偏差(ずれ)の許容値内にあるかを規定するものです。
姿勢偏差に分類される幾何特性には、平行度、直角度、傾斜度、線の輪郭度、面の輪郭度があります。
本稿では、平行度、直角度、傾斜度の指示例と公差域を取り上げます。
(線の輪郭度、面の輪郭度は、第5回を参照)
1.姿勢偏差の種類と特徴
姿勢偏差は、基準となるデータムを必ず参照し、その形体が指定したあるべき形状(カタチ)と角度(傾き)になっているかを要求する特性です。
形状と傾きを満足すれば、位置までは規制されません。
姿勢偏差を形体の表面に指示したとき、特に指定しない限り、面全体が対象です。
このとき、相手部材の形状が丸棒やナイフエッジ状の場合、設計意図を伝えるには母線で指示するべきです。
しかし、形状偏差と違い、姿勢偏差には母線を指示する記号が存在しないため、LE(LineElement:線の要素)という記号を、公差記入枠の下部に記載します(図1)。
図1:平行度を線の要素で指示した例
図1は、データムAに平行で、かつデータムBに直角な任意の位置にある線分が、0.1mm離れた平行2直線間にあればよいことを意味しています。
この場合、2次データムであるデータムBは、……
>>第6回 第1章の続きを読む(PDFダウンロード)
2.平行度の指示例と公差域
平行度は、その中心線や表面が基準に対して、どれだけ平行から傾いているかを表す指標です。
・穴の中心線を基準にして、他の穴の中心線に平行度を指示する場合
図2は、中心線同士の平行度の指示例とその公差域です。
それぞれの穴の寸法線の延長線上に、データムと幾何公差の指示線を当てます。
指示線を当てた穴の中心線は、データム軸と平行な円筒内になければなりません。
円筒の直径は公差記入枠で指定され、図2では0.1mmです。
この場合、公差域となる穴とデータム穴の距離は、一般寸法(2点間距離)で管理するため、幾何公差としては平行度のみを確認します。
図2:中心線同士の平行度の指示例とその公差域
・一方の平面を基準にして、対向する平面に平行度を指示する場合
図3は、平面同士の平行度の指示例とその公差域です。
寸法線から外れた表面に、データムと幾何公差の指示線を当てます。
この場合、指示線を当てた平面は、データム平面と平行な平行2平面間になければなりません。
平行2平面間の距離は公差記入枠で指定され、図3では0.1mmです。
公差域となる平行2平面とデータム面の距離は、一般寸法(2点間距離)で管理するため、幾何公差としては平行のみを確認します。
図3:平面同士の平行度の指示例とその公差域
・一方の平面を基準にして、他の穴の中心線に平行度を指示する場合
……
>>第6回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.直角度の指示例と公差域
直角度は、その中心線や表面が、基準に対して、どれだけ直角から傾いているかを表す指標です。
・平面を基準にして、穴の中心線に直角度を指示する場合
図7は、平面と中心線の直角度の指示例とその公差域です。
表面にデータムを指示し、穴の寸法線の延長線上に幾何公差の指示線を当てます。
指示線を当てた穴の中心線は、データム面と直角な円筒内になければなりません。
円筒の直径は公差記入枠で指定され、図7では0.1mmです。
図7:平面と中心線の直角度の指示例とその公差域
・平面を基準にして、側面に直角度を指示する場合
……
>>第6回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
4.傾斜度の指示例と公差域
傾斜度は、その中心線や表面が基準に対して、理論的に正確な角度からどれだけ傾いているかを表す指標です。
傾斜度は、必ず理論寸法と組み合わせて使用します。
・平面を基準にして、傾斜した平面に傾斜度を指示する場合
図9は、平面同士の傾斜度の指示例とその公差域です。
基準面の表面にデータムを指示し、傾斜面の表面に指示線を当てます。
この場合、指示線を当てた傾斜面は、……
>>第6回 第4章の続きを読む(PDFダウンロード)
5.姿勢偏差と形状偏差の関係
……
>>第6回 第5章の続きを読む(PDFダウンロード)
第7回:位置偏差の指示例と公差域の定義
前回は、姿勢偏差の指示例と公差域の定義を解説しました。
今回は、姿勢偏差に加えて、その位置までも規制する位置偏差を取り上げます。
位置偏差に分類される幾何特性の定義や、位置偏差の公差域の指示方法を理解しましょう。
1.位置偏差の特徴
位置偏差は、対象となる形体の中心点や中心線、中心平面が、幾何学的に正しい位置にあることを表す偏差(ずれ)の許容値内にあるかを規定するものです。
位置偏差に分類される幾何特性には、同軸度・同心度、対象度、位置度、線の輪郭度、面の輪郭度があります。
位置偏差は、基準となるデータムを参照し、その形体が指定した位置にあるかを要求する特性です。
ただし、位置度においては、条件によってデータムを不要とすることもあります。
2.同軸度・同心度の指示例と公差域
同軸度と同心度は、指示された形体の中心がデータム形体の中心に対して、どれだけずれているかを表す指標です。
作図上のルールは全く同じで、図面に指示する場合は同じ二重丸の記号を使用し、公差値には⌀を付けます。
両者の違いは、その対象となる形体の長さです。
中心軸が長い場合は同軸度、板金部品のように厚みが数mmしかないものは同心度と使い分けます。
・同軸度
同軸度は、対象となる軸の中心線が、同一直線上にある基準となる軸の中心線に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す指標です。
図1は、2つの軸の同軸度の指示例とその公差域です。
それぞれの軸の寸法線の延長線上に、データムと幾何公差の指示線を当てます。
指示線を当てた軸の中心線は、データム軸と同一ライン上にある円筒内に存在しなければなりません。
円筒の直径は公差記入枠で指定され、図1では0.05mmです。
図1:同軸度の指示例とその公差域
・同心度
……
>>第7回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.対称度の指示例と公差域
対称度は、対象となる中心平面や中心線が、同一平面上にある基準となる中心平面に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す指標です。
公差値には⌀を付けません。
・中心平面に対称度を指示する場合
図3は、形体の中心平面を基準にしたときの、同一平面上にある他の形体の対称度の指示例です。
それぞれの寸法線の延長線上に、データムと幾何公差の指示線を当てます。
指示線を当てた形体の中心平面は、データム平面から等間隔に離れた2面間に存在しなければなりません。
2面間の距離は、公差記入枠で指定され、図3では0.1mmです。
図3:面の対称度の指示例とその公差域
・形体の中央にある穴の中心線に対称度を指示する場合
……
>>第7回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
4.位置度の指示例と公差域
位置度は、対象となる中心線や表面が、基準となる中心線や平面から離れた場所のあるべき位置に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す指標です。
図5は、位置度の指示例です。
3方向の面を基準にして、穴の中心線に位置度を指示します。
3つの基準面の表面にデータムを指示し、穴の中心線に指示線を当てます。
この場合、指示線を当てた中心線は、……
>>第7回 第4章の続きを読む(PDFダウンロード)
5.線の輪郭度の指示例と公差域
位置公差における線の輪郭度は、対象となる母線が理論的に正しい形状であり、かつ基準となる中心線や表面からのあるべき位置に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す指標です。
線の輪郭度は、表面形体にのみ指示できます。
図6は、位置公差における線の輪郭度の指示例です。
この場合、指示線を当てた母線は、……
>>第7回 第5章の続きを読む(PDFダウンロード)
6.面の輪郭度の指示例と公差域
位置公差における面の輪郭度は、対象となる表面が理論的に正しい形状であり、かつ基準となる中心線や表面からのあるべき位置に対して、どれだけ位置ずれしているかを表す指標です。
面の輪郭度は、表面形体にのみ指示できます。
図7は、位置公差における面の輪郭度の指示例です。
指示線を当てた表面は、……
>>第7回 第6章の続きを読む(PDFダウンロード)
7.位置偏差と姿勢偏差の相関関係
……
>>第7回 第7章の続きを読む(PDFダウンロード)
第8回:振れ偏差の指示例と公差域の定義
前回は、位置偏差の指示例と公差域の定義を解説しました。
最終回となる今回は、振れ偏差です。
振れ偏差は、回転機能を持つ部品の振れを規制します。
その指示例と公差域を理解しましょう。
1.振れ偏差の特徴
振れ偏差は、対象となる形体が、回転体の表面において、指定された方向の変位が偏差(ずれ)の許容値内にあるかを規定するものです。
振れ偏差に分類される幾何特性には、円周振れ、全振れがあります。
振れ偏差は、基準となるデータムを参照し、回転する形体表面が指定した位置にあるかを要求する特性です。
形状偏差、姿勢偏差、位置偏差との関連はありません。
振れ幅は、ラジアル方向(円周方向)とアキシャル方向(軸線方向)のどちらにも使うことができます。
2.円周振れの指示例と公差域
円周振れは、円筒を基準となる中心線で回転させたときに、円筒面、あるいは軸直角端面の任意の位置での母線がどれだけ振れているかを表す指標です。
・ラジアル方向の円周振れ
図1は、左右の軸の中心線を共通の基準にしたときの中央の円筒表面への円周振れの指示例です。
この場合、左右の軸の寸法線の延長線上にデータムA、データムBを共通データムとして指示し、円筒面の母面に指示線を当てます。
共通データムであることを示すため、公差記入枠の1つの区画に「A-B」と記入します。
指示線を当てた円筒面の任意の位置における振れは、データムに平行な同一平面上の離れた2線間になければならず、図1では0.1mmです。
図1:ラジアル方向の円周振れの指示例と公差域
・アキシャル方向の円周振れ
……
>>第8回 第2章の続きを読む(PDFダウンロード)
3.全振れの指示例と公差域
全振れは、円筒を基準となる中心線で回転させたときに、円筒の表面全体、あるいは端面全体がどれだけ振れているかを表す指標です。
・ラジアル方向の全振れ
図3は、左右の軸の中心線を共通の基準にしたときの中央の円筒表面への全振れの指示例です。
この場合、左右の軸の寸法線の延長線上にデータムA、データムBを共通データムとして指示し、円筒面の表面に指示線を当てます。
共通データムであることを示すため、公差記入枠の1つの区画に「A-B」と記入します。
指示線を当てた円筒表面全体の振れは、データムに平行な同一平面上の離れた2線間になければならず、図3では0.1mmです。
図3:ラジアル方向の全振れの指示例と公差域
・アキシャル方向の円周振れ……
>>第8回 第3章の続きを読む(PDFダウンロード)
4.円周振れと全振れの違い
円周振れと全振れは、共に回転する形体表面の振れを評価します。
ただし、円周振れは任意の位置での一断面の振れだけを評価するのに対し、全振れは指示された範囲全てを合わせて評価します。
従って、直径差のある形体や軸直角端面がテーパーとなる形体では、円周振れ、または全振れの測定結果に違いが生じます。
図5の場合、……
>>第8回 第4章の続きを読む(PDFダウンロード)
5.円周振れと同軸度の違い
ここまで読んで、同軸度と円周振れは同じではないのかと思っている人もいるでしょう(同軸度については第7回を参照)。
どちらの特性でも、Vブロックとダイヤルゲージを使った測定や、真円度測定機、3次元測定機を使った測定の様子は、同じように見えます。
しかし、幾何特性の目的を理解していれば、その違いは一目瞭然です。
円周振れと同軸度は、評価する形体が異なります。
そのため、データム円筒に対して同軸度ゼロのだ円を持つ形体で比較すると、その違いが分かります(図6)。
図6:円周振れと同軸度の図面指示の違い
データムとなる円筒中心線に対して、それぞれの中心線が同一線上にある場合、評価対象となる形体がだ円形に崩れていたとしても、同軸度はゼロと評価されます。
一方、データムとなる円筒中心線に対して、評価対象形体がだ円形に崩れていると、……
>>第8回 第5章の続きを読む(PDFダウンロード)
ピックアップ記事
ダムの施工:ダムの基礎知識5
ニュースまとめ(12/20~12/26)
tags
半導体補助金コンクリート水質汚染塗装エンプラ表面処理切削金属熱処理ゴムIoTドローンAI鉄道信号ロボットFTA/FMEAプロセス安全管理化学工業異物混入対策大気汚染TPMからくり食品包装品質工学はんだ付けISO粉体工学HACCPトヨタ生産方式環境と公害
TechNote(テックノート)
@technote_iprosさんのツイート
延伸文章資訊
- 1幾何公差
當最大實體狀況應用於基準形態時,將最大實體狀況符號加註在. 基準字母之後。 Page 17. 範例. ❑ 銷子的真直度公差為Φ0.01, ...
- 2幾何公差の図示方法 | ミスミ メカニカル加工部品
形状公差, 真直度公差, 真直度公差, 公差域を示す数値の前に、記号φが付いている場合には、この公差域は直径tの円筒の中の領域である。 真直度公差 ...
- 3幾何公差の記号一覧 - 機械設計エンジニアの基礎知識
真直度. JISでは、「直線形体の幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさ」と定義されています。 翻訳すると・・・ 真直度は 真っ直ぐさ を指定するものです。
- 4幾何公差記號、附加記號一覽 - Keyence
公差記號 ; 形狀公差. 正平直度. 「直線程度」的指定。 ; 定向公差. 平行度. 對於基準「2個直線或平面的平行程度」的指定。 ; 位置公差. 位置度. 對於基準「正確位置程度」的 ...
- 5你是這樣理解直線度的嗎? - 每日頭條
當直線度如下標註,標註時與尺寸公差箭頭對齊,那麼這時直線度控制的是中心要素及中心線,而不是表面線素。當控制中心線時,公差值前面應該加修飾符號Ø, ...